「また,子どもを連れてきていいですか? 」「もちろん,いいです。」
保育園に通う二人の男の子の母親の相談だった。
遠くからいらっしゃった。
おそらく1時間半かけてきたのではないだろうか。
相談中,子どもたちが事務所内をうろちょろしていた。
しきりに母親は,そのことを気にかけていた。
土曜日は,保育園は休みで,どこかに預ければ,
お金がかかる。
したがって,私の事務所では,
子連れの相談を当然のごとく,了解する。
1時間半もよく子どもたちは,我慢した。
終わりの方では,もう帰ろうと言って忍耐の限界に近づいていた。
帰り際,玄関で二人の子どもに,
「お母さんを大切にするんだよ。」「掃除なんか,手伝ってあげるんだよ。」
と声をかけた。
子どもたちは,そんな私のことばなど気に止めずに玄関から飛び出して行く。
私は母親に向かって,
「今度来るときは,もっと大きくなっているね。」と言った。
母親は,相談中子どもたちが,飛んだり跳ねたり,相談室から出たり入ったり
していたので,私が子ども連れの相談は,もうこりごりと思っていると
思ったのか,
心配そうに
「また,子どもを連れてきていいですか。」
と私に聞いた。
「もちろん,いいです。」
と答えた。
健気に,子育てをしている。
小さな事務所で一生懸命働いている。
別居中の夫の借金が事務所に知れたら
クビになるかと心配していた。
私が
「そんなことはありませんよ」
といっても,小さな事務所では,
大変よくしてもらっているようで,
何かと心配していた。
おそらく,今日から,法律問題の心配はなくなるだろう。
元気よく帰る親子の後ろ姿をみながら,
せっかくの土曜日が,という嘆きはなく,
親子の幸せ少しでも法律が役立ったようで,
気持ちのよい土曜日だった。
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