Aさんにやっと行政の手が届く-医療保護入院10年以上、県内20人 自治体対応に温度差
12月2日の埼玉新聞に私が担当したAさんの記事があった。
紹介します。
記事の本文は以下のとおり、
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医療保護入院は、患者の意思とは異なる判断で入院の手続きが行われるため、法律や福祉の専門家は「障害者の人権が脅かされる」「形骸化している」と指摘。各自治体の対応にも温度差があり、改善を求める声が上がっている。
10月下旬から11月にかけて、県内63自治体の担当者に電話で取材した。市町村長の同意により10年以上医療保護入院している20人は、18市2町長が同意していた。20人は身寄りがなく、症状が改善しないため、やむを得ず入院が長期化しているとみられる。
精神保健福祉法では、市町村長の同意後、担当者が「速やかに本人に面会し、状態を把握する」としている。入院者が死亡・退院した場合や、同意する家族らが見つかった場合に、市町村長の同意は解除される。
自治体の対応に温度差があることも浮き彫りになった。
入院者に対応している自治体は「定期的に病院に訪問し連絡を取っている」「病院や施設と連携し、本人による任意の入院や施設への移行を図っている」「人権の問題。慎重に対応している」などの声があった。
一方、担当者が入院者を訪問していない自治体もあった。「年に一度電話で病院に確認するだけ」「(入院者は)病院の手厚い保護が受けられる。同意後は行政が介入すべきではない」などの意見もあった。
長期入院している20人のうち、県北部で10年を経過した入院者は2人だった。秩父郡市の自治体担当者は「同意しても、すぐに保護者が現れ解除になる。長期化するケースはない」という。身寄りのない高齢者の入院が長期化する事例は、都市部の方が多い。
同意解除の確認をせず、書式上、医療保護入院の同意が継続している例も。ある担当者は「病院から解除の連絡が来ないので分からない」と自治体からの確認には消極的な姿勢を見せた。
同意の事務を複数の部署で担当し、情報を共有していない自治体も目立った。2市が「資料がない」ことなどを理由に「分からない」と回答した。
県疾病対策課によると、県内で医療保護入院の入院者の数は約8千人に上る。大半は家族などが同意しており、市町村長の同意による医療保護入院は約500人程度で推移しているとされる。
同課の担当者は「市町村長が同意した後、入院後のフォローがどこまで行われるかは、その自治体ごとの判断によるところが大きい」としている。
精神的な障害により精神保健指定医が入院が必要と判定した患者で、家族等がいない場合、市町村長が入院に同意する。
精神保健福祉法に基づく「医療保護入院」は、都道府県知事の権限と責任で入院を強制する「措置入院」、本人の同意による「任意入院」と区別される。
政府は今年4月、同法改正により同意する保護者の要件を修正。改正同法は医療機関に対して、医療保護入院者に、退院後の生活に向け、入院者を支援する相談員の選任を義務付けている。
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