• 最新記事

  • 「人権の風」新聞

    PDFで表示されます。

    第2号
    「子ども置き去り 35人学級ができない」他
    (2021/1)

    第1号
    「癒着・忖度を生む市長の5選 いいのか?朝霞市のため 刷新しよう」他
    (2021/1)

  • 記事一覧

    プロフィール
    小山の法律家・市民としての活動経歴をお知らせします
    まちづくり構想
    すべての人を置き去りにしない、しあわせ中心社会のまちに生きる
    日々思うこと
    小山が日々の生活・仕事の中で感じたことを自由につづっています。下記カテゴリー別にお読みください。
    憲法
    貧困と人権
    教育
    平和と共生
    議員活動
    その他
    メディア掲載情報
    新聞、雑誌等の記事に掲載された活動を紹介します
    法教育
    法教育についてのページ一覧です
    議会発言録
    朝霞市議会・担当委員会での小山の発言の一覧です
    ご連絡先
    小山へのご意見、お問い合わせ等の宛先です
  • カレンダー

    2016年8月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
  • アーカイブ

主権者教育(4)ー地域における主権者教育ー

第3 地域における主権者教育
  1 学校の外にある社会は地域である。市町村という基礎自治体は、教育・文化、社会福祉、保健衛生、公営事業、公共事業、防犯・安全などの住民に身近な仕事をしている。国の政治は間接民主制であるのに対し、地方自治は直接民主制機能があり、地方自治は民主主義の学校と言われている。さらに地方自治体が望めば、条例や自治体の要綱によって、大人のみならず子どもも地方政治に参加できるような民主主義の学校(機関)を作ることができる。
地方自治体の中には、自治基本条例、まちづくり条例、さらには子どものまちづくり条例や自治体要綱などによって、子どもの地方政治参加を図っている所もある。1994(平成6)年の子どもの権利条約批准以降、同条約上の子どもの参加する権利について、自治体が子どもの権利条例を制定し、子どもの参加する権利を受けているケースもある(注1)。
しかし、全体としてみると、現実には大人の住民の地方自治への参加の拡充はそれほどなされておらず、まして子どもをまちづくりの参加に組み入れているのは少数である。多くの自治体では、大人が子どもの気持ちを推察して子どもに関する施策を行っている。現状では、地方自治は民主主義の学校といわれながら、その機能を十分に果たしていない。
2  多くの自治体は、教育目的から子ども議会を行っている(注2)。しかしながら本来、子ども議会は模擬議会であるべきではなく、まちづくり目的の意義を持たせるべきである。その上で、子ども議会の議員の選任を各学校での公選制にし、立候補する生徒は自分の政策を訴えて立候補させるとよい。そして、首長側が子ども議会に諮問する機会を設ける等、子ども議会を1日だけではなく年間通じて子どもたちが恒常的に話し合うまちづくりの機関と位置づけるべきである。
3 子どもたちが容易にまちづくりに参加できる手段として憲法16条の請願がある。文科省の教材では、地方議会に対する模擬請願を指導している(注3)。子どもたちも、まちで生活する住民として、学校、児童館、公民館、図書館、道路などに関心と意見があるはずである。現実問題として、請願には紹介議員が必要というハードルがあるが、子どもたちが請願を出せば、議員たちも新鮮な気持ちで子どもたちと向き合い、まちづくりの貴重な意見として賛同することがあるだろう。
   実際、2005(平成17)年静岡市内の中学生が市議会に「歩きタバコ禁止条例」の制定に関する請願を提出し、「歩きたばこはとても迷惑です。条例で禁止してください」という請願の趣旨を説明し、市議会で審議され、全会一致で採択され、翌2006(平成18)年6月「歩きタバコ禁止条例」が制定された、という例がある(注4)。
3 現在、多くの地方議会の実態を見てみると、地方政治は首長、議員が共に公選される二元代表制であるのに、国政の議院内閣制と同様、会派(建前としては政策上のグループ)があり、会派によっては、与党会派と称して首長を支えている。このため多くの地方議会では、首長提案の議案は、審議する前に賛否の結論は決まっているようにみえる。
さらには、議員の見せ場となる筈の一般質問において、質問する議員と答弁する市長等の執行者側がそれぞれに対応する原稿を読んでいる。この実態をみて、元総務大臣が地方議会の本会議を学芸会とか八百長議会と揶揄している。議員同士の自由討論すらない。
子どもたちがこのような地方議会の実情を知ったとき、学級会の方がより活発な議論があり、民主的だと思ってしまうかもしれない。また、地方自治は民主主義の学校といわれながら、それは名ばかりで、市民から遠い存在になっていることに気づくかもしれない。しかしながら、子どもたちが、現実の地方自治の実態を批判的にみることも一つの主権者教育として意味がないわけではない。そんな子どもたちが将来、地方自治の変革者、民主主義の担い手となってほしいと思う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(注1) 1994(平成6)年の子どもの権利条約批准後、子どもの権利条例が、条約の理念に基づき各自治体によって制定されてきた。一時子どもの権利条例の制定が注目をあびてきたが、最近では子どもの権利条例中の子どもの意見表明権などで、子どもがわがままになるとして、同条例制定の動きがあると組織的に阻止されることがある。これは、人権は相互に人権の存在を認め、調整するものだという理解を欠いていることによる。このような認識を持っている市民に対し、弁護士として、人権は我が儘を醸成するのではなく、共生社会を醸成するものであることを啓蒙する必要がある。
(注2)なお、総務省・文科省教材「私たちが拓く日本の未来」では模擬議会を取り上げている(78頁)。
(注3)同上72頁
(注4) 静岡市のホームページよりー 2005(平成17)年11月、市内中学生を請願代表者らとする静岡市「歩きタバコ禁止条例」の制定に関する請願が静岡市議会に提出され、審議の結果、全会一致で採択されました。静岡市は、これを受け翌2006(平成18)年1月、市民生活部市民生活課を事務局として、静岡市歩きたばこ等禁止条例検討委員会及び同作業部会を庁内に設置し、庁内関係課とともに条例の制定に向け検討を開始しました。同年3月には、市民意見の募集や実態調査を行い、これらの結果を踏まえた上で、同年6月の市議会に「静岡市路上喫煙による被害等の防止に関する条例」を上程し、可決されました。なお、請願署名者は約2万4000人とのこと。