被告人を懲役○年○月に処す。この裁判確定の日から○年間その執行を猶予する。

今日、埼玉地方裁判所の刑事部に上記のとおり、判決があった。

事件は、住居侵入・窃盗事犯である。

居酒屋に、忍び込む際にドアのガラスを破り

約500円を窃取したという事案である。

被告人(Rさんと呼ぼう)は、ある国からの日本に来た難民である。

問題は、母国語が少数言語であり、通訳人の確保に難儀をした。

私は、遅くとも48時間以内に接見しなければならないと思っていた。

通訳人がいなかった。

そこで自腹を切って、紹介業者に紹介料を支払って

少数言語の教師を探しだした。

数回接見をしていると被告人はフランス語がしゃべれることがわかった。

地元でフランス人で市内の小学校、中学校に通った青年がいた。

このフランス人にも通訳をしてもらった。

ある国の大使館から、Rさんに対して照会があった。

この場合、弁護人の態度は、慎重を要する。

ある国からの難民である。

その照会が真に人権の考慮の照会なのか、

ある国に対して好ましくないものとして、Rさんを捉え、その立場での照会か、どうか不明である。

結局、Rさんと接見し、本人は大使館の照会に答えることに心配があるというので、

結局、弁護人として、私が被告人を弁護しているか、どうかを含め、

「弁護士は、ある人の弁護をしているかどうかを含め個人情報について回答しない。」という紋切りの回答をした。

この事件では主に二つのことをした。

一つは、示談の試みてある。

Rさんはお金がない。私が負担するつもりである。

(ある弁護士は、刑事弁護で示談という情状の作出に、当然に弁護料の一部(1万円程度まで)

示談をするのは当然であるといっているのを私もまねて実践しているに過ぎない。)

ガラスの修復はかなりの弁償金になることを心配して、

被害者の経営者におそるおそる、示談を提案したところ、

保険に入っており、保険金をもらっていのので、いらないと回答された。

いらないといわれても、何らの書面がないのは、困るので、

わずかでもいいので、慰謝料を払いたいといっても拒絶された。

むしろ、今では被告人に対し処罰の意思もないとも回答してくれた。

そこで被害者の被害回復の状況と処罰の意思がないことを報告書にまとめて裁判に提出した。

判決では、執行猶予の一つとして報告書を引用して示談が成立していることも挙げていた。

他の一つは,難民支援団体に対する支援要請である。

団体の職員が裁判の証人どなってくれて、しかも、緊急宿泊の配慮もしてくれるというのである。

裁判官もこれで安心をしたのか、被告人に対し執行猶予の判決を出してくれた。

釈放されたRさんと一緒に警察にいって所持品を受け取り、その後のことをは団体の職員に任せた。

この事件は文字通り身を粉にして担当した事件である。

Rさんは、ある国のレスリングの元チャンピオンといっていた。

私は必ず更生できると信じているし、さらには日本で難民認定になることを願っている。

Rさんは、警察署では、留置係の担当者から「Congratulation」といわれていた。

私も、日本語で「おめでとう」といったら

Rさんは、「どうもありがとうございます。」たどたどしく答えてくれた。

Rさんと難民支援団体の職員を夕方、ある駅付近まで車に乗せ、

別れるとき、固い握手を何回も繰り返した。

あーよかった!

Rさんとは、被疑者段階で2回、起訴後4回合計6回接見した。言葉の不自由な留置場で、
私と通訳人たちとの接見が唯一のこころの安らぎになったのかもしれない。