落とし物が届けられた。

先日朝、事務所に出かけようとしたら、いつも腰につけるポシェットがない。
前日の夜の、事務所から自宅に帰る途中の足どりの記憶を辿る。

交番に行ってみた。届け出はないとること。

そこで落とし物の届け出をした。

現金、運転免許証、カード、それに弁護士の身分証明書が入っていた。
弁護士バッチはあるので、裁判所とか警察には入れるが、

身分証明書がないと、いろいろな手続きができなくなる。

翌日、とりあえず、大急ぎで大宮の運転免許センターにいって、免許証の再交付を受けた。

事務所に戻り、まず、銀行のカードの紛失と再交付の手続きをした。

次にクレジットカードの紛失と再交付をするために連絡先などがわからず、もたもたしていると、電話が掛かってきた。

着信番号の末尾が0110だった。事務員が電話を受けていた。

刑事事件も終わり、被告人からの接見の希望もないはずだ、

でも、誰が接見の希望なのか、と頭を巡らし、事務員の応答に耳をそばだてる。

「朝霞警察のなんとか、なんとか・・・」

なんと私が落としたポシェットが警察に届けられたとの連絡である。

お金も入っているのに、出てきた。

このとき、以前弁護した事件を思い出していた。

弁護士に成り立てのころ、刑事弁護をしたことのある人から接見の連絡があった。

私は、刑事被告人には、刑事弁護は1回しかしないといっており、どんな用事なのか思案して接見室に入った。

本人から真顔で質問された。

「先生、すいません。教えて下さい。ここに100万円が落ちているとしたら、先生はどうしますか。」

「私は、交番に届ける」

「なぜですか。私は届けない」

「落とした人は、顔を青くして探しているのではないか。」

本当にこの本人には、目の前にお金があり、誰もみていないときは、自分のものにする考えについて悩んでいるようだった。

 

今回、私のものを拾われた人は、落とした人(私)が顔を青くしていることを想像してくれたのであろうか。

落としたものが出てくる、現金も入っているのに。

警察署を出るとき、拾って頂いた人そして、この社会の健全な明るさを胸で感じ、じんとした。